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ミンナ大好き○○の末路 2020年からアーリーリタイアはじめました

騎士竜戦隊リュウソウジャーの最終回までに龍井ういが果たせなかった事

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 最終回をむかえた騎士竜戦隊リュウソウジャーで途中退場した龍井ういが再登場しました。再登場時のその顔や身体を覆い隠すような服装から察せられるものの、物語上でなく現実的な何らかの理由で龍井ういが退場せざるを得ない事になったのは間違いないでしょう。そんなアクシデントのため、騎士竜戦隊リュウソウジャーの最終回までに龍井ういが果たせなかった事はなんだったのでしょうか?

 騎士竜戦隊リュウソウジャーとは『居場所』の物語だったのではないかと思っています。生まれ故郷という居場所を失った者。師匠の庇護という居場所を奪われた者。長命種の亜人が故に人間社会に居場所を作れない者。居場所が無い故に居場所を奪おうとする者。組織の中で上司に恵まれず居場所を探す者。リュウソウ族と人間代表としてファーストコンタクトを果たす龍井ういもまた居場所が無いが故に孤独を抱え、物語冒頭でいきなりマイナス思考から生み出される怪物、マイナソーの養分になってしまいます。しかしOPやEDでリュウソウ族によって孤独から救い出されるようなイメージの映像の通り、彼らとの交流によって変化し、母親の死をも乗り越える程に成長していきます。

 さて、最終局面。ラスボス『エラス』は地球を防衛させるために産み出したリュウソウ族が意にそぐわなかったので、それを滅ぼすためにドルイドンを産み出したけどそれも駄目だったから全部リコールかけて地球ごと作り直すという逆ギレ泥縄対応が判明します。

 冒頭でリュウソウジャーは『居場所』の物語といいましたが、エラスの正体によって『クリエイターの憂鬱』というテーマも内包されている事が浮かんできます。龍井ういは映像クリエイターとして動画を配信していますが再生数は伸びずファンに恵まれず、クレオンは良い仕事をするマイナソーを産み出す能力を持っていますがクライアントに恵まれず、エラスは創造したものを制御できないというマネジメントに恵まれませんでした。この三者はクリエイターだが恵まれない居場所を探す者として描かれていたのに、最終的に交わる事がありませんでした。それは最終決戦前に龍井ういが退場してしまった事で物語の収束に若干の方向転換がはかられたからではないでしょうか?

 

 エラスはリュウソウ族・ドルイドン・人間を幸福な夢と共に眠らせて、己の肉体に吸収し、その養分で新たな生物を産み出すテラフォーミングを始めるわけですが、この事態はエラスとリュウソウ族とドルイドンだけで進められ、人間は完全に貰い事故なんですよね。同族同士で戦争を始めたリュウソウ族やドルイドンはなじっても、「愚かな人類は環境を破壊するから~」とか人間への怨嗟は一言も言って無いんですよ。そもそも人間もエラスから生み出されたのか、元々地球の固有種なのか、どういう存在なのかが判然としないんですよね。そうなった原因は、何らかの事実を受け止める人間代表、つまり龍井ういが物語から消失してしまったためなんだと思います。

 46話で戦闘形態になるためにドルイドンを吸収せんと伸ばしたエラスの触手に貫かれたクレオンがその言葉を代弁するのは、クリエイターの憂鬱を背負い遂に居場所を見つけた者としてこれ以上の適任はなかったでしょう。しながらなぜかそのまま吸収されずに、47話で眠ったリュウソウジャー達をおこして回った上で、改めてエラスに吸収されるという回りくどい扱いをされます。さらに戦意を喪失したリュウソウジャー達を再び奮い立たせるのが、あえて今まで皆を引っ張て来たコウで無い者が担うのはわかるのですが、なぜアスナ?という違和感。龍井ういが存在すればこの辺りがスッキリします。

 46話でクレオンはそのままエラスに吸収され、47話でエラスに吸収されたアスナ達をエラスの中から助ける。龍井うい自身はこれまでの成長により幸福な世界に居心地の悪さを覚え、夢から自力で目覚め、リュウソウジャーを起こす。幸せな夢の世界こそが皆がいる居場所なのではないかと戦意を喪失したリュウソウジャーに、彼らから居場所を貰ったからこそ自力で目覚めることのできた彼女が感情を爆発させ、仲間がいない世界は居場所ではないと激白しリュウソウジャーを鼓舞する。それを龍井ういが果たせなかったため代弁者が必要だった。最終回における復興した故郷に残り、ミンナの帰る場所を、居場所を守るという選択をするのが既定路線とするなら、アスナしか代弁者になりえなかった。あのキレ気味の演技は本来龍井ういのセリフという事を知ったうえで、共にゴールを果たせなかった仲間の無念を背負ったものだったのかもしれませんね。

 そして最終回での一時帰国した龍井ういをミンナが迎えるというラストシーンは、騎士竜戦隊リュウソウジャーという物語的なものだけでなく、騎士竜戦隊リュウソウジャーに関わった演者やスタッフのメタ的にも、彼女の居場所はいつでもここにあるという大団円だったと思います。

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