令和にアニメや漫画やゲームを消費しているのは昭和の野球オヤジ

　子供の頃、将来の夢は無かったけど、なりたくないモノがあったんですよ。それは、野球オヤジ

　毎週見ているテレビ番組を中止して野球を放送する横暴さに、ただでさえ野球自体に良い感情を持っていないのに、それを見ているオヤジが輪をかけて嫌悪感を煽るんですよ。巨人が勝とうが中日が負けようが生活に何の恩恵も不利益もこうむらないのに感情をむき出しにして一喜一憂……いや一喜悦一激怒。テレビに向かって選手を呼び捨てで褒めたり罵ったり。いや、知り合いドコロかあった事もない人に、何でそんな酷いこと言えるのかがサッパリわからないが、野球オヤジ曰く『愛』があるのだそうだ

　街も危険に溢れていたんですよ。子供会で毎年ソフトボール大会があるので強制で練習させられるんですが、コーチは甲子園どころか大会で何かしたというわけでもない、ただ野球が好きなだけの、そこらの時間が自由になる自営業の野球オヤジがニッコニコでやってくるんですよ。フォームだの何だのの野球論を熱く押し付けてくるけど、ノックのボールは一向に狙った場所に飛んでこず、あさってに転がってくボールを追いかけてグランドの端っこまでダッシュばかり。友達と遊んでいてもふいに近所の野球オヤジが野球を教えようと忍び寄ってくる事も当時は普通にあって恐怖しかない

　たまに外食していると、草野球終わりの泥のついたユニフォームに身を包んだオヤジ達がスパイクをガチャガチャと鳴らして店になだれ込み「宴だ～！」と大声でガッハッハワッハッハやりはじめるんですよ。もう、子供心に大人が街中でちゃんとしてない格好で、野球帽とかワンパクないでたちでウロウロしてるだけで異様な恥ずかしさに囚われてアウトなのに、ウェイトレスをオネエチャン呼ばわりするこの醜態。後年。まさか就職したら部内のエースでリーダー的な人望のある先輩が野球オヤジで草野球チームを作るとか言い出して断る事も出来ずユニフォームを作らされた上にファミレスに入った日にゃあ、半透明の子供の頃のボクに冷めた目でずっとコッチを見てましたよ。コロシテ......コロシテ......。その後、グランドに救急車を呼ぶ羽目になって部長から野球禁止令が出た時は、青空に笑顔の半透明の子供の頃のボクが浮かんでましたよ。サッカーオヤジの魔の手が忍び寄っていることも知らずに……

　さて、何で野球オヤジがどうこうなんて話をし出したかというと、元々ボク自身がネット界隈のコミュニケーションがチョッと苦手で距離をとりがちなんですが、最近アレコレを見る機会が増えたことで、ふと野球オヤジの事を思い出したんですよ。それで何か令和にアニメや漫画やゲームを消費しているのは昭和の野球オヤジなんじゃあないかなぁと思ったんですよね。怒鳴ってる対象がテレビからキーボードに変わりはしてますが、みたいな。最近の謎に興味を持たないのにネタバレにはやたら厳しいとか、野球オヤジ的に試合の勝敗しか興味がないからなんじゃあないかとか。試合（ストーリー）だけみても実は何やってるのかよくわかってないから実況や解説者（ネット）が必要とかね。そういや、草野球でプロ球団に似せた野球のユニフォーム作るのも言ってみればコスプレだよね

　結局オタクという存在が社会的に認知されたのでなく、認知されたのはアニメや漫画やゲーム等のコンテンツであって、それらを昭和野球オヤジのように消費しているのが今の時代なんじゃあないかと思ったんですね。総ヲタク化ではなく総野球オヤジ化というか、誰もが持っていた野球オヤジの素養の受け皿が野球以外に広がったという事なんじゃあないかなと独り合点したわけなんですよ

pikawa.hatenablog.com