仮面ライダーリバイスは母殺しの物語なのか

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バンダイ(BANDAI)

　１話では仮面ライダーリバイスは母殺しの物語なのかな？という感想でしたが、２話を見るに主人公一輝の家族それぞれへ怨嗟をしばらくは紹介しつつ母殺しに向かって行きそうだなぁという感想です

　仮面ライダーというかヒーローモノ自体が父殺しの構造を含む事が多いのですが、仮面ライダーリバイスにおいては、今後どう描写されるかはわかりませんが、現時点では父親は昼行燈なお父さんで、主人公一輝の壁や脅威的なニュアンスも持っているように見えません。代わりに目を引くのが一輝の中の悪魔バイスが母親を狙って食べようと二度も描写される事です。作品中の悪魔の定義が今のところ「誰もが体に宿している」ぐらいで人間個人の精神と繋がってるモノなのかどうなのかという説明も無いのですが、一輝が銭湯の常連客にコーヒー牛乳を振舞うと「甘いモノをとらせて病気にさせようとしている」とバイスは囁きます。これを、人間の中にいる悪魔とは、仮面ライダーリバイスにおいても他の創作等でもよくある従来のイメージ通り、人が心に押し殺している本音であるとすれば、バイスが母親を食べようとする意味の察しがついてきます

　一輝は有望なサッカー選手でありながらなぜか自らプロへの道を断念し家族経営の銭湯で働いています。その母親は悪魔の襲撃騒動に巻き込まれ負傷し病院で目覚めてまず口にしたのが「銭湯」への心配。そして家族が病室に雁首揃えている事に気づくと「サボったら、怒るよ」と、自分同様巻き込まれた家族の身体の心配ひとつしません。その母親に一輝は「銭湯は俺にまかせてよ」と答えます。建前と本音。「銭湯を守る」という口で「母親を食べよう」としている......。一輝は本音の部分では銭湯を、母親を呪っているのではないか？　常連にコーヒー牛乳を振舞うのも、常連が病んで銭湯に来なくなれば、客足が減って銭湯が潰れてしまえば、自分は解放されるという思いがあるのではないか？　そう捉える事もできる不穏さがバイスの行動にはあります。サッカーを諦めて選んだ銭湯を守る人生は本意ではない。選んだのではなく選ばざるをえなかった人生。選ばせたのは……?

　２話で一輝は一度は断った仮面ライダーになる事をなぜかあっさりと受け入れます。しかし、その仮面ライダーになる話を再び持ってきた弟をバイスは食べようとします。実は望んでない仮面ライダーという面倒事を持ち込んできたからという突発的なモノか、銭湯に囚われずやりたいようにやっている事への嫉妬なのか、果たしてそこにある感情は？　ただ、バイスの食べたい欲には優先順位があるようで、家族が集まった場で家長として君臨する母親に対してバイスは改めて他の家族のだれよりも美味そうと欲します。その場で一輝は仮面ライダーになる事を改めて母親に背中をおされるのですが、それはよくある美談にも見えますが、どこまでいっても母親の言いなりでしかない息子にも見えます。そこには心理学者ユングの唱えたグレートマザーの二面性的な、子供を束縛する有害な母親像がどうにもチラつくのです

　さて、日本でポピュラーな母殺しの物語は須佐之男命の八岐大蛇退治なのだそうです。須佐之男命は八岐大蛇を倒しその尾から草薙の剣を獲ます。しかしスサノオは手にした一国の王にもなれる大いなる力を母親代わりとも言える姉の天照大神に献上します。結局母離れが出来なかったわけです。巨大な爬虫類から得た力......「恐竜」の力を母親に捧げてしまうのか？　銭湯という舞台は母親が閉じこもる天岩戸であると同時に、液体に漬かる居心地の良い場所という子宮のメタファーなのかもしれません。今はお湯に……羊水にどっぷり浸かっている状態の一輝。仮面ライダーリバイスとはRe:birth、一輝の再誕生の物語が紡がれていくのでしょうか？